台湾の「納税者権利保護法」に学ぶ研修団・報告

 2023年9月10日から13日において、橘悦二ティグレグループ代表を団長とする計8名が、台湾を訪問しました。訪問の目的は、2016年に制定された台湾の「納税者権利保護法」の取り組みに学び、日本における納税者権利憲章制定の取り組みを再構築することです。

 訪問先は、
①中華民国財政部台北国税局
②中華民国内政部(マイナンバー担当)
③中華民国記帳及報税代理人公会全国連合会(台湾最大の組織)
です。

 今回の台湾の訪問にあたり、牧義夫衆議院議員(見附輝志秘書・同行)、台北駐日経済文化代表処、長谷川博税理士(元日本税理士連合会常務理事・同行)、台湾現地において、外交部の協力を得て実現しました。
 また、馮寄台氏(元ドミニカ共和国大使・台北駐日経済文化代表処(大使館に相当)代表)主催の晩餐会に招待され、著名な書家張炳煌氏とも懇親を深めました。

 台北国税局と中華民国記帳及報税代理人公会全国連合会では、
①納税者権利保護法が制定できた経緯や背景
②納税者権利保護法が制定されどのような効果が出たのか、不十分な所はないか
③納税者の権利保障はどのように進められているのか
④納税者権利保護官について
を中心に意見交換しました。

 内政部については、過去において行政サービスを受ける際は、窓口の前に長い列を作り、各種書類に記入する必要があった。そこで、現場のサービスを受けるための時間の節約を図ると同時に、電子政府政策の推進の下で、オンライン市民サービスおよび行政アプリを開発した等、行政サービスの急速な電子化への変化についての説明を受けました。

特筆すべき事項として

① 納税者の権利保護に関し、憲法に定める基本的権利の保障が十分でないとして先進諸国の立法を参考にし、世界の立法動向に適合し、国際基準に適合するよう、3人の権威ある教授が起草し、2016年6月に立法委員会の提案により広範な検討と審査が行われ、ついに2016年12月に公布されました。「納税者権利保護法」は全23か条からなり、2017年12月28日から施行されています。
 財政部では、「納税者権利保護法」の制定を推進し、納税に関する人権を守り、基本的に公平な課税の実現、手続き的正義の厳格な遵守は我が国の重要な目標であるとしています。

② 「納税者権利保護法」が制定後、行政救済事件を提起する比率は明らかに低減し、納税者の満足度は相対的に向上したこと。また、財政部の職員は検査の面でより厳しくなり、態度も以前より優しくなったこと。(連合会報告)

③ 納税者権利保護法の円滑な施行を促進し、対外的に周知するため、2017年1月5日に「納税者の権利保護法推進の権利保護法推進ワーキンググループ」を設置し、様々な面で広報していることです。

④ 財政部の下に財政部長を主席とする納税者の権利保護のための諮問会議を設置し、関係政府機関、学者、専門家、団体を招いて、3か月おきに会議を開催、納税者の権利保護に関する問題について助言を提供する。この諮問会議に、記帳及報税代理人公会全国連合会の役員の多くが委員として任に就いているとの報告。

⑤ 納税者権利保護官を配置していることです。(任務については、第20条参照)

今後の課題として

① 「税務審査官」の制度を設置し、会計士資格を持つ会計専門職、または税務機関に勤務していた税務専門知識と実務経験のある人を選抜して担当させ、裁判官に専門上の協力を提供することです。

② 納税者権利保護官は現行、財政部の各地の国税局及び地方税務機関が選任し、一定の条件を備えなければ担当できないとしているが、現実は、国税局の職員のみ。現に国税局と納税者の間に紛争が生じた場合、誰を守るのか分らない。納税者権利保護官は組織上で独立性を備えなければならず、会計専門知識のある裁判官や弁護士、会計士及び税務経験のある専門家・学者が担当することで、その機能を発揮することができます。従って、納税者権利保護官が客観的かつ中立に職務を遂行できるよう、納税者権利保護官に専門家を含める取り組みを進める必要があります。

 最後に、長谷川博税理士にこの法律(全23条)の概略をまとめて頂きましたので、掲載します。

① 1条(目的)憲法に定める生存権、労働権、財産権等の基本権の保障、納税者の権利の確保、課税の公平の実現、正当な法的秩序の徹底。

② 3条(租税法律主義)法の解釈は租税法律主義に基づき、立法目的に従い課税の公平を図る。

③ 4条(基本生活費の非課税)一人当たり可処分所得から基本生活費を算出。

④ 5条(税負担の公平)応能負担の原則、差別的扱いの禁止。

⑤ 8条(情報公開)国民の所得分布と税負担割合、租税支出の状況、その他公平な課
税に役立つ情報の自主的公開。

⑥ 10条(納税者の権利保障)納税者に対する適切な支援、課税及び納税の正当な手続の保障。

⑦ 11条(課税庁の責務)ⅰ調査の合理性と権利侵害の抑制、ⅱ課税庁の挙証責任、ⅲ違法収集証拠の無効性、ⅳ課税前の納税者の弁明の機会、ⅴ課税処分の理由開示、上記課税処分等の書面の必要性。

⑧ 18条(税務行政裁判所)税務訴訟裁判所の設置。

⑨ 19条(納税者権利保護審議会)納税者保護の諮問審議会の設置。

⑩ 20条(納税者権利保護官)納税者支援の提供、納税係争の調整、異議申立の受理、年次報告書の提出のための専門職員の設置。

【財政部台北国税局】

橘悦二ティグレグループ代表(写真左)
呉蓮英財政部台北国税局局長(写真右)
財政部台北国税局との懇談の様子
(正面左端:金一賢主任納保管)
納税者権利保護法制定後の台湾国内の動きについて
台北国税局の訪問団歓迎のテレビモニター
台北国税局看板
台北国税局玄関
台北国税局入口
TW08
オンブズマンによる納税者権利保護のサポートを標榜するポスター
TW09
台北国税局の皆様と

【内政部(マイナンバー担当)】

橘悦二ティグレグループ代表(写真左)
呉堂安内政部常務次長(写真右)
内政部(マイナンバー担当)からの説明
呉堂安内政部常務次長等との懇談
台湾内政部レジュメ
TW14
内政部が入居する庁舎前にて 長谷川博税理士(写真左)、橘悦二ティグレグループ代表(写真右)
フロアガイド
台湾マイナンバーカード
台湾内政部の皆様と

【中華民国記帳及報税代理人公会全国連合会】

洪明賢記帳及報税代理人公会全国連合会理事長(写真左)
橘悦二ティグレグループ代表(写真右)
洪明賢理事長挨拶(写真中央)
記帳及報税代理人公会全国連合会との懇談
長谷川博税理士 元日本税理士連合会常務理事(写真右)
記帳及報税代理人公会全国連合会主催の懇親会
記帳及報税代理人公会全国連合会の皆様と

【馮寄台氏主催の晩餐会(元台北駐日経済文化代表処〈大使館に相当〉代表)】

馮寄台氏(写真前列右から3番目)主催の晩餐会
元台北駐日経済文化代表処(大使館に相当)代表
2列目右端外交部張仁久氏
馮寄台氏主催の晩餐会の様子

【書道家の張炳煌老師との懇談】

左から橘悦二ティグレグループ代表
牧義夫衆議院議員見附輝志秘書、
書道家の張炳煌老師《張炳煌氏は中華民国絵画協会の2023年度書道部門で金杯賞を受賞》
書道家 張炳煌老師(写真左)との懇談
写真右は記帳及報税代理人公会全国連合会の蕭渉方監事召集人、右から二番目が記帳及報税代理人公会全国連合会の鍾芳玲副理事長
張炳煌老師による書

【台北市街の様子】

故宮博物館 [左から松下麿ティグレ連合会専務理事、清岡和彦ティグレフォーラム事務局長、ティグレパートナーズ北九州社員税理士下川静税理士法人・通訳、大星將博税理士法人ティグレパートナーズ東京社員税理士、西井勢津子ティグレフォーラム相談役、長谷川博税理士(元日本税理士連合会常務理事)、橘悦二ティグレグループ代表]
世界人権宣言75
2023世界人権ポスター特別展示会
中正記念堂
中正記念堂紹介文
蒋介石総統府執務室の復元
台北市街の様子
台北市迪化街 漢方薬などの問屋が並ぶ
レトロな街並みが残る迪化街
台北101展望台
台北101展望台ガイド
台北101展望台から台北市内を望む
台湾の消防車
台湾では自家用車も公的車両も輸入車が多い
台北市の地下鉄(電子マネー)
悠遊カード(ICカード)